「山に生きる 福島・阿武隈 シイタケと原木と芽吹きと」鈴木久美子(著)(彩流社、2023年5月)
「山に生きる 福島・阿武隈 シイタケと原木と芽吹きと」鈴木久美子(著)、(彩流社、2023年5月、2,420円(税込))
当研究所の拠点、福島県田村市都路町では長い間、豊富な広葉樹を生かして木炭を焼き、シイタケ栽培のための原木を生産してきました。特にシイタケ原木は日本有数の産地でした。人が木を使い、森は良好な状態が保たれていたのです。
2011年3月11日の東日本大震災に続く東京電力福島第1原発事故により、そうした山の生業は一瞬にしてできなくなってしまいました。今、山の暮らしはどうなっているのだろう。そしてこれからは―。阿武隈山地に住む人々の言葉を聞いたルポ。(鈴木久美子)
「ふくしま復興 農と暮らしの復権」藤川賢・石井秀樹(編著)(東信堂、2021年3月)
「ふくしま復興 農と暮らしの復権」藤川賢・石井秀樹(編著)、(東信堂、2021年3月、2970円(税込))
福島原発事故の被害を風化させない「復興」の姿と責任の所在を問う、農業と人々の暮らしの「復権」に向けた重要な一冊。
第5章は当団体メンバーである藤原が執筆。山の放射能汚染による被害は甚大であり、汚染された山をどのようにしていくかは被災地域が抱える課題の一つである。広葉樹林の広大な面積を誇る阿武隈地域。その中央に位置し、国内有数のシイタケ原木生産地であった田村市都路町を舞台にそのヒントを探る。
地域の歴史を振り返りながら、広葉樹林が地域の生業や暮らしにもたらす価値を多面的に捉え、その生業を通じて豊かな資源が紡がれてきた歴史的な連続性を解き明かす。そのうえで、汚染された山の資源管理・利用については、放射能被ばくを抑える工夫をしながら、現世代のみならず将来世代に豊かな資源を紡ぎ、山の暮らしや文化を継承することの重要性を提起する。(藤原遥)
「森林の放射線生態学—福島の森を考える」橋本昌司・小松雅史(著)、三浦覚(執筆協力)(丸善出版、2021年3月)
「森林の放射線生態学—福島の森を考える」橋本昌司・小松雅史(著)、三浦覚(執筆協力)(丸善出版、2021年3月、2200円(税込))
原発事故による森林の放射能汚染の影響は甚大でしたが、避難指示が解除された地域では少しずつ里山の暮らしが戻ってきています。とはいえ、汚染の程度によって戻り具合もさまざまで、汚染や被ばくとどう向き合っていけばよいのかすっきりしないままという方も少なくないのではないでしょうか。
この本は、森林の放射能汚染の実態や影響、対策について、この10年間で明らかになったことと被ばく防護の考え方を分かりやすく解説しています。(三浦覚)
ドキュメンタリー映画「失われた春 シイタケの教え」(田嶋雅己)
「失われた春」は、原子力発電所事故の翌年に撮影を開始し、翌々年からは福島県に居を移し、原木シイタケ栽培者等と酒を酌み交わした信頼の下に6年を費して取材した、写真家、田嶋氏の初ドキメンタリー映画です。客観的で中立的立場で記録した作品でありながら、心の底から溢れ出す言葉と美しい映像は、生業により持続的に活用される事で形成された里山の景観と暮らしの価値を再認識させ、さらに、失われた事により気づかされた教えを、今後、我々がどう継承すべきか、国境や文化を越えて問いかけてきます。(熊田淳)
月刊「グリーン・パワー」2014年3月号(公益財団法人森林文化協会)
放射性物質フォールアウト直後の、福島県におけるきのこ栽培の状況と汚染低減技術開発の概略です。シイタケ原木の自動洗浄装置開発の契機となった、原木関係者と連携して実施した試行試験について報告しています。さらに、これらの技術開発とともに、事故前後の暮らしの実態を解析し、未来の「里山の暮らし」を地域住民とともに創造し、その青写真の中に研究技術を位置づける必要性に言及しています。(熊田淳)
里山林保全活用指針作りのための参考事例集(林野庁補助事業「森林総合利用推進事業」)
「しいたけ原木林(コナラ・クヌギ)」
里山林保全活用指針作りのための参考事例集(林野庁補助事業「森林総合利用推進事業」)農山村支援センター&共存の森ネットワーク
里山を代表するコナラ、クヌギの特徴、用途の変遷、全国的な森林整備状況を概説し、優良事例としてふくしま中央森林組合都路事業所と三春町の原木生産者を取材したレポートです。いわゆる「雑木」を活用する経済行為により、里山の森林整備を持続してきたあぶくまの地域コミュニティーの特殊性と貴重性について、最も容易に理解することができる資料です。(熊田淳)
季刊地域 No.41 2020年春号 (農文協、2020年4月)/季刊地域 No.42 2020年夏号 (農文協、2020年7月)
季刊地域 No.41 2020年春号(農文協、2020年4月、943円(税込))
季刊地域 No.42 2020年夏号(農文協、2020年7月、943円(税込))
41号では、地域で山に木を植える人や植えた木で小さく稼ぐ人の山の暮らしが紹介されています。研究所の代表も登場します。
42号では、「雑木」とひとくくりにされる広葉樹に焦点があてられ、広葉樹林と広葉樹材、そして、さまざまな林産物がもたらす山の恵みの多様性が紹介されています。雑木の山は、科学技術が発達した現代にあっても、今の時代のやり方で里山の暮らしを支えています。(三浦覚)
東京新聞特集・連載「広葉樹の里山で人は 福島・阿武隈」(鈴木久美子)
東京新聞特集・連載「広葉樹の里山で人は 福島・阿武隈」(東京新聞記者 鈴木久美子)
福島県田村市都路町、阿武隈山地に広がる広葉樹のなだらかな山々は、シイタケ原木生産の一大拠点でした。東京電力福島第1原発事故により、生産は滞っています。人と山の関わりはどうなっているのでしょうか。現地の人々への取材報告です。2020年1月6日~2月7日まで、東京新聞・中日新聞夕刊文化面に連載。(鈴木久美子)
都路の風景(2020年秋)
フォトジャーナリスト・田嶋雅巳氏による都路の風景写真。あぶくま山の暮らし研究所Webサイトのトップページに使用されている14枚です。
田嶋氏による阿武隈地域の写真記録は、あぶくま山の暮らし研究所 Instagramをご覧ください。